病牀雑記(12) 9.6
引っ越し。新橋から千葉県へ
12月の或る日、午前中。約5ヶ月ぶりに我が愛車・HONDA N-ONE RS 6MTを病院の地下駐車場で対面した。勿論、運転するのは兄であるが、この日の転院の為に兄はわざわざ私の愛車を出してくれたのだ。普段兄が乗っている車はオートマチック車だと言うのに、それも平日の都内まで自分の車ではなく私の車を出してくれたのは感激であった。
数ヶ月ぶりの、娑婆の空気。入院した頃とはうって変わってすっかり冬の様相を示している。しかし車内にいる限りは寒さも感じない。都内から自宅へ、結局下道で二時間弱のドライブとなった。この頃は数時間おきに溜まった痰を除去してやらないといけなかったのだが、移動中は心配するようなことも無く、無事に我が家へ到着する。
さほど時間に余裕があるわけでは無いので、服装等季節ものの交換、無くて不便していたものをピックアップしたり逆に不要となったものを置いたりなどの雑用をこなす。入院直前の状況を目の当たりにしてとても懐かしい。用事を済ませると転院先の病院へ移動する。
転院の手続や検査などを済ませると早速病室に入る。緩和ケア病棟と言うことで、基本全室個室なのだが、生憎空きがなかったので、差額料金が必要な特別個室に一先ずは入室することになった。差額料金と言っても、都内の病院とは比較にならない程安価ではあるが。(その後、二週間もしないで普通の個室に移動できた。)
個室の快適さ、緩和ケアの意味
長らくカーテン一枚で仕切られた4人部屋から、いきなり個室へと移動してとても快適であった。TVやYouTubeを見るにしてもイヤホン・ヘッドホンがいらないし、トイレや洗面所が自分専用であることも心強かった。今では無くなったが、利尿剤を入れている時にトイレに立っても先客がいた時の絶望感を味わわずに済むのである。今でこそ告白するが、前の大部屋の時はいろいろ間に合わずに下着を汚したことも数度ありました(涙)。
ここまでの移動をアシストしてくれた兄も帰ると個室に一人。カーテンで区切られた大部屋でも、そのカーテンの中では一人であるが、その実感は全く異なる。またこれならリモートワークも前よりも集中してできそう。そして何よりも、楽天モバイルの電波が4Gではあるが途切れずに安定して入る! 勿論メイン回線のソフトバンクモバイルも5Gで安定している。これは捗りますね(何が?笑)
そのお陰でサブ(楽天)のサブ回線だったmineoも解約しました。行く行くは楽天もやめてPixel 8aも人に譲るなりするかなあ。
個室が快適な分、持ち込むものも増えたり、通販も普通に使ったりして悠々自適な日々を行っていました。こうして普通の病棟よりも緩く快適なのは、やはりここが緩和ケア病棟だからだろう。
ある日、郵便物を投函しに病院内のポストへ行った帰りに、エレベーターから下りてきたのは御遺体と御遺族の方々であった。私が転院してきてさほど時間を待たずに普通個室へ移動できたのも、病室に空きができたからである。それが必ずしも死によるものとは限らないし、一月以上この病棟に入院していても患者さんが亡くなられるところを知ることは無かった。それでもこの時の光景は、自分が今いる環境を強く自覚することとなった。
自分では、食事とカニュレのことがあるから緩和ケア病棟に入院しているのだと言い聞かせ、周囲にも言っていたが、それだけでは無い、重い現実から目を反らしていたのだ。
話が前後するが、転院してから己の誕生日、そして新年を迎えた頃は、治療が終了した頃と同等かそれ以上に上調子だったと思う。また週に一回程度の頻度で自宅へ一時帰宅することも叶った。
治療を担当した主治医の元を離れることには当初抵抗もあったし、前の病院の方が安心なところもあったが、体調が落ち着いていたこともあって、やがてそのような不安は払拭されていった。
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