2007-06-21

初めて城山三郎を読む

今年三月の訃報によって、久しぶりに城山三郎の名を思い出した。
親友が元来城山三郎のファンであり、学生時代から話には聞いていたのだが、実際に著作を読む機会には恵まれなかった。

7月号の文藝春秋で絶筆となった半生記を読み、ふと本屋に寄った時に目に入ったのが「男子の本懐」(新潮文庫)だった。ベリのファンの集いへ行く時、移動中の読書用に買ったので17日か。

先ず、出だしの序章で引き込まれた。
出だしで一気にここまで引き込まれたのは久しぶりだ。
そして何よりも、イマジネーションの喚起が自然で且つ容易な文体が心地好い。人物や情景が頭の中で自然に結像する。

しかし圧巻は最後の行(くだり)、井上準之助の最期、葬儀の場面だろう。

(略)粉雪の舞いはじめた道を、井上は寝台自動車で三河台の邸へ戻った。(中略)
白布の下から、櫛のよく通った銀色の髪がのぞいて見え、その髪に粉雪がまといついた。
そして、
暗い夜、粉雪は霙に変わり、さらにまた雪に戻った。
その凍てつく街に、ひとしきり、号外の鈴の音が走った。
城山三郎の文学的表現者としての凄さを感じ、また背筋がゾクッとするほどの感動を覚えた。

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