2007-07-08

フィクションとイマジネーション

創元推理文庫・「怪奇小説傑作選4」のその後、続きその2。

サドの「ロドリゴあるいは呪縛の塔」の後、順当に「ギスモンド城の幽霊」(シャルル・ノディエ)、「シャルル十一世の幻覚」(プロスペル・メリメ)、「緑色の怪物」(ジェラール・ド・ネルヴァル)、「解剖学者ドン・ベサリウス」(ペトリュス・ボレル)と、読み進める。
ここまではどれも退屈しない程度には面白い。元来俺的には、フィクショナルな物語とか怪奇譚の類が好きなわけで。
でもややありきたりな感じも受けるが、それは王道を行っているが故であろう。

序盤の数篇を読み通して思ったのは、欧州の物語の舞台装置として欠かせないのが城であるという点だ。
西洋の城については、それこそ小説や映画の中でしか知らない世界であり、俺個人としてはまさにイマジネールなものでしかない。舞台が(西洋的)城、はては時代を隔てた西洋という時点で、多分にイマジネールなものとならざるを得ない。
或いは、舞台背景を如何に想像できるかという点に、言語表現芸術としての力量が問われるとも言えよう。俺がラブクラフトに傾倒したきっかけは、インスマウスという街の想像/幻想/構築、そしてそのイメージの味わい深さからである。(「インスマウスの影」)
自分にとって未知なる世界を、如何に想像し、味わえるかに作品の善し悪しをみる。

そうした点において、「ギスモンド城の幽霊」、「シャルル十一世の幻覚」あたりがそこそこか。
しかし、敢えて怪奇譚としては、ペトリュス・ボレルの「解剖学者ドン・ベサリウス」が推せる。

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