2007-07-07

「ロドリゴあるいは呪縛の塔」マルキ・ド・サド

ポオ全集か、或いはラブ・クラフト全集か…以来、久しぶりに創元推理文庫に手を出した。書名は『怪奇小説傑作集4』(G.アポリネール 他)。本来なら1巻から買うべきであろうが、メリメやモーパッサンに惹かれてフランス編の4巻を購入と相成った。

とは言うものの、丁度今読み始めたばかりというか、1話目を読み終えたに過ぎないのだが、その1話目と言うのがタイトルに挙げたサドの「ロドリゴあるいは呪縛の塔」。サドと言えば『悪徳の栄え』とか『ソドム百二十日』あたりが有名所だが、実を言うと、寡聞にしてサドをきちんと読んだのは今回が初めてだ。


初っ端から面白かった。何気なしに読み始めたので、サドの作品だとは意識せずに読んでいた。

呪縛の塔の内部で展開していく幻想的な風景の描写が、読み手である自分自身のイマジネーションと直結しているかの様であり、白昼夢を見ているかのごとくに生々しくすら感じる。中でも鷲の背に乗って宇宙に飛ぶ行(くだり)、ちょっと幻覚めいていて、とても好きなシーンだ。

それともう一点読んでいて気付いたのは、進行のテンポが心地好い早さだということだ。描写が冗長にならないし、このテンポ感はやはり夢見のテンポに近いかもしれない。
そして最後の決闘シーンでの落ち。この急展開は実に秀逸。

読了後、改めて著者をみたらマルキ・ド・サドで再度感心した次第。サドがこういった作品を書いていたというのはちょっと意外だった。

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