2007-07-24

湘南色

やはり城山三郎の文章表現は良い。
例の『鼠』の八章の冒頭―

 わたしは、湘南電車が好きだ。
 濃い緑と蜜柑色、明るく強い色だ。いつも陽光を感じさせる。
 登場したとき、騒がれたかどうか。騒がれはしなくとも、よろこばれる色ではあったろう。人間的な色である。
(中略)
 新幹線―パールグレイとネイヴィブルーの冷たいメカニックな色、とりすました貴公子の顔だ。その横を、今日も律儀者はせっせと脇目もふらず走る。健気に、まっとうに走る。
 濃い緑とオレンジ―それは太陽の色、人間の色、あざむくことのない色だ。
緑とオレンジの所謂湘南色と呼ばれている、東海道線の列車の色だ。今ではステンレス製の新型車両となり、厳密な意味でのツートンの湘南色ではなくなってしまったが。

表現・描写としても好きだが、こうした部分からも城山三郎の人柄が読めて取れるようだ。

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